ニューロンたった1個の記憶
特定の人物に選択的に反応する脳細胞がある
しかも抽象的な概念を記憶しているようだ
雑誌の表紙に載っている有名人の顔をみると、
脳はそれが誰かをすぐに認識する。
これはたった1個のニューロン(神経細胞)の働きによるらしい。
最近の研究によると、
こうした画像の解釈に必要とされるニューロンの数は
以前に考えられていたよりもずっと少ない。
記憶がどのように生まれて蓄えられるのか、その仕組みに迫る発見だ。
人間の脳が画像を認識するメカニズムは詳しくはわかっていない。
過去数十年に2つのまるで異なる説が提唱されている。
1つは、
何百万ものニューロンが協調して働き、
さまざまな断片的情報を統合して全体を認識するという説。
もう1つは、
個々の物体や人物の認識に対応する細胞が1個ずつあるという説だ。
1960年代、神経生物学者レトバン(Jerome Lettvin)は
後者を「おばあちゃん細胞説」と名づけた。
脳の中には家族1人ひとりを認識するためだけに使われる神経細胞があり、
これを失うと例えばおばあちゃんを思い出せなくなるというわけだ。
その後、この説は単純すぎるとして忘れ去られた。
月刊誌「日経サイエンス」から