たたくほど強くなる理由
鋼がたたくほど強くなるのは、
結晶中の?ずれ?によることがわかった。
鋼の強度は、結晶格子の一部がずれて原子が
線状に連なった「転位」によって決まる。
例えば、金属が曲がるのは、
転位が結晶中を移動するためにおきる。
しかし、鋼などの金属を繰り返したたくと強度が増す理由は、
1本の転位では説明できず、謎であった。
カリフォルニア大学のブラトフ博士らは、
複数の転位が衝突して、転位の「多重接合」がおき、強度が増すことを明らかにした。
金属をたたくと強度が増す現象が、複数の転位によって説明されたのだ。
転位の動きを、
スーパーコンピューターでシュミレーションした結果でも、
多重接合ができると転位の移動を妨げ、強度が増すことがわかった。
さらに、電子顕微鏡を使い、実験的にその存在を確認した。
博士らによると、
多重接合では複数の転位が絡み合い、立体的なネットワークを作っていたという。
この多重接合によって、超強度の材料開発のヒントが得られた、と博士らは述べている。
科学月刊誌「NEWTON」から