復元された殺人ウイルス

        1918年に世界的大流行を引き起こした
         インフルエンザ「スペイン風邪」のウイルスが
実験室内で復元された。


 陸軍病理学研究所のタウベンバーガー(Jeffery Taubenberger)らは
犠牲者の保存組織からウイルスの遺伝子を抽出し、その配列を解読した。
   Nature誌2005年10月6日号に掲載された報告によると、


 スペイン風邪ウイルスは
  ほかの大流行を引き起こしたウイルスとは違って、
  ヒト・インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスが
   組み換えによって複合したものではないという。
 むしろ、鳥などほかの生物を宿主としていたウイルスが
  変異してヒトへの感染性を一挙に獲得したものらしい。


     いまアジアから欧州へと広がりつつある
  H5N1型の鳥インフルエンザウイルスも、
    これと同様の変異を起こす可能性がある。
       実際、致死性のウイルスが生まれる恐れがある。


 米疾病対策センターCDC)のタンピー(terrence Tumpey)は
  スペイン風邪ウイルスのゲノム配列をもとにウイルスそのものを復元し、
  Science誌10月7日号に報告した。
       復元した殺人ウイルスをマウスに感染させたところ、
 1000個ほどのウイルスにさらしただけで発病し、最終的には死亡した。
 細菌のH5N1型ウイルスにはさらに病原性の強いものがあり、
  たった10〜15個のウイルスだけでマウスが発病し、
                      死亡した例もある。



月刊誌「日経サイエンス」から