原生生物と藻類の複合体

前回の続き

      体長は約30μmで、2本のべん毛を持つ。
         全体は透明だが、部分的に緑色をしており、
            そこには葉緑体がある。


 こうした形態などから、
  カタブレファリス門に属する捕食性の原生生物の体内に
                ネフロセルミス属の藻類が共生し、
  全体として統制がとれた生物体として機能しているとみられる。


 通常の単細胞生物では細胞分裂によって姿形が同じもう1つの
                    生物が生まれるが、
 ハテナは違う。
   葉緑体部分は分裂した一方だけに受け継がれ、
    もう片方はまったく葉緑体を持たない無色透明の姿になる。
   葉緑体を受け継いだほうは以前と同様に光合成が生きるが、
   葉緑体を持たないほうには新たに口ができ、藻類を食べ始める。
   捕食された藻類の多くは消化されてしまうが、
   特定種類の藻類を取り込んだ場合は消化せずに共生関係を結ぶようになり、
   口が消え、光合成で生きる姿に戻ると考えられている。
   ただし、
   共生の対象となる藻類は単独ではまだ海水中から発見されておらず、
   ハテナがもとの“植物の姿”に戻る過程は未確認だ。


植物の姿をしたハテナの場合、
  光を感じる「眼点」という器官が
     2本のべん毛の付け根近くの葉緑体の部分にある。
  宿主の原生生物と共生藻類との間で何らかのやり取りがあって、
  藻類の眼点の場所が常に一定位置に来るように制御されていると見られる。
  さらに、
  共生関係を結んだ状態の藻類は
    通常のネフロセルミス属よりもサイズが10倍以上大きく、
  「宿主による遺伝的改変が行われているようだ」(井上教授)という。


    ハテナは最初に発見された海岸以外からも採種されており、
      幅広い地域に存在するとみられる。


 ただ、共生関係が生まれる過程の解明はこれから。



         宿主となるカタブレファリス門そのものも謎が多く、
                                     引き続き新たな発見が期待できそうだ。




月刊誌「日経サイエンス」から