深海で油を食べる細菌

原油が流出したメキシコ湾の深海では、予想より早く原油が分解されそうだ。
Science2010年10月8日号


2010年4月20日、メキシコ湾の海底油田で事故がおき、その後膨大な量の原油が流出した。
環境への影響を調べるため、アメリカローレンスバークリー国立研究所のヘイゼン博士らは、5月と6月に現場周辺の17箇所で、深海ごとに海水および原油を採取した。分析の結果、原油中では酸素が減少し、微生物の濃度が上昇しており、原油を分解する細菌の活動がうかがえた。


微生物の遺伝情報を分析すると、原油中でとくに多く含まれる細菌はどれも、知られている原油分解細菌と近縁であることがわかった。
既知の原油分解細菌は深海のような低温下では活動が鈍い。一方今回の細菌は低温でも活発で、原油にもその活動の痕跡となる物質が含まれていた。


このことから、当初の予想より早く原油が分解されることが示唆された。
博士らは、この細菌の活動で、魚などの害となる大規模な酸素消費がおきることはないだろうとも話している
「NEWTON」2011年2月号から