微生物を予防に生かす
前回の続き
欧米では、西側諸国よりもかつての社会主義国や東欧諸国で
アトピー性疾患が少ないことが報告されている。
ビョークステン(Bengt Bjorksten)らは西欧型の生活様式によって
乳児・幼児期に細菌に刺激される機会が減り、
結果的にTh1免疫系への刺激が少なくなっている可能性を指摘した。
そこでビョークステンらは
アレルギーの有病率が低いエストニアと有病率が高いスウェーデンで
子供の便中の細菌を調べた。
その結果、アレルギー児と非アレルギー児の腸内細菌叢の組成は異なっていた。
しかも生まれて最初の1週間ですでに腸内細菌叢が形成されていることがわかった。
また、生まれてまもなく、アトピー症状がまったく出現していない時期でも、
アレルギー児と非アレルギー児で腸内細菌叢に違いがあることがわかった。
新生児は生まれた直後から鼻や口を通じて母親の皮膚や母乳、
空気中の微生物などを体内に取り込み、腸内細菌叢が作られていく。
この腸内細菌の刺激によって免疫系を発達させ、
異物を正しく排除しながら、
過剰なアレルギー反応も起こすことのないように設計されている。
「日経サイエンス」から