微生物を予防に生かす
前回の続き
乳児期にできあがった腸内細菌叢は
その後維持され、大きく組成が変わることはない。
そのため、ひとたび異常な腸内細菌叢ができてしまうと、
免疫系の発達に問題が生じることがある。
アレルギー児と非アレルギー児の比較では
食生活や抗生剤の使用状況には差がなかったことから、
母親の腸内細菌叢、また出産時の環境などによって
乳幼児の免疫の発達やアレルギー疾患の
起こりやすさが違ってくるのだろう。
乳幼児期以降、ヒトの腸内細菌叢の組成は大きくは変わりにくいとしても、
先進国特有の生活様式や摂取する食品を変えることで、
アレルギー疾患を起こしやすい腸内細菌叢を
改善できるかもしれない。
私たちは日本でアレルギー発症と関連する児童の腸内細菌叢の調査を始めている。
もともと新生児の免疫系はTh2が優位にある。
動物実験では、無菌状態で育てたマウスは成長後も免疫系がTh2に傾いており、
免疫システムの成立には腸内細菌の存在が必須だと考えられる。
「日経サイエンス」から