謎に満ちた腸内細菌の作用
前回の続き
その論文はスタンフォード大学のエックバーグ(Paul B. Eckburg)らによるもので、
ゲノム解析に基づいて推定すると、
私たちの腸内には少なくとも400種の微生物がいるという。
それぞれの種には複数の系統があるため、その違いまで考えると膨大な数になる。
人間の腸では、微生物が糖を消化しやすい形に分解して、
カロリーの20%以上を解放しているらしい。
謎に満ちた腸内細菌が健康にどんな影響を与えているのか、解明は始まったばかりだ。
例えば2年前、ウイスコンシン大学医学部のビニオン(david G. Bimion)は、
腸内細菌が作り出した酪酸ナトリウムがCOX2という酵素を遮断して
腸の血管成長を抑えることを明らかにした。
COX2は多くの炎症性疾患に関係する酵素だ。
別の研究では、
ある系統の大腸菌がジメチルアルシン(ヒ素を含む化合物の一種)を
代謝して有害物質を作り出す可能性が示された。
ヒ素によって腸にガンができるのは、このためかもしれない。
一方、腸内微生物は大豆などの食物に含まれる有効成分を取り出す働きもするらしい。
さらに、太りやすい人の腸内にはカロリー節約にたけた細菌がいて、
これが肥満の原因となっているのではないかとゴードンらは考えている。
月刊誌「日経サイエンス」から