特殊な結合と発火
前回の続き
ジョンズ・ホプキンズ大学の神経科学者コナー(Charles Connor)は
「特定の人物に対して1個のニューロンが
こうもはっきりと反応すると予測した科学者は
そう多くないはずだ」と話す。
「これらニューロンがどんな情報に対応しているのかを詳しく調べれば、
記憶がどのようにコード化されているのかを探る出発点となる」。
研究チームの一員である
カリフォルニア工科大学のコッホ(Christof Koch)は、
“ジェニファー・アニストン細胞”の働きは
「おばあちゃん細胞」とよく似ているものの、
だからといって個々の脳細胞が特定の人や物だけに反応するとは
いえないと指摘する。
おそらく、
これらの細胞はさまざまな事柄に反応している
(複数の人物や物体に反応する神経細胞もあった)。
「私たちはこれらが『おばあちゃん細胞』であると
主張しているのではない。
家族や有名人、よく目にするものなど身近な対象に対しては、
以前に考えられていたよりもニューロンが
はるかに特殊な形で結びついて発火しているのだ」と
コッホは話す。
この発見は
認知症などの病気の研究に影響を与えそうだが、
キアン=キローガはもっと実用的な展開を考えている。
埋め込み式のコミュニケーション補助装置、
いわゆる“思考解読装置”だ。
「患者の考えていることをコンピューターによって翻訳できれば、
意思疎通の助けになるだろう」という。
月刊誌「日経サイエンス」から