ある種の海洋細菌は少数の遺伝子しか持たない 進化の過程で“効率”
1人の人間を作るのに
必要なタンパク質の情報が書かれた遺伝子は
約2万5000個だが、
これはゲノム全体の1〜2%にすぎない。
残りは「ジャンクDNA」と呼ばれ、
タンパク質合成の情報を直接には含んでいない。
しかし、
厳しい環境で生き延びるために
極めて効率的に機能する必要がある場合には、
生命の維持に必要最低限の遺伝子だけが残された。
新たにこの生物界の“チャンピオン”の座に就いたのが、
Science誌2005年8月19日号に報告された
海洋性バクテリアのペラギバクター・ウビクエ
(Pelagibacter ubique、SAR11)だ。
単独の単細胞生物としては最小の部類で、遺伝子数はたった1354個。
SAR11にはムダなDNAがほとんどない」と
微生物学者のジョバノーニ(Stephen J.Giovan-noni)はいう。
ジョバノーニはオレゴン州立大学と
ダイバーサ社(有用な天然の医薬品や酵素を探す会社)の
共同研究グループを率いている。
このバクテリアの遺伝子配列は生存に最低限必要なものだけで、
多くの生物のゲノムが時とともに蓄えてきた余分な配列がないに等しい。
重複配列はないし、ウイルス由来の遺伝子も、イントロンや非コード配列もない
(寄生虫や共生体にはさらにゲノムの小さなものがあるが、
これらは生きるために必要な機能を他の生物に依存している)。
月刊誌「日経サイエンス」から