静脈注射で細胞移植も

前回の続き

Stem Cell誌オンライン版2005年8月10日号に掲載されたこの発見は、
  脳障害の治療に新たな希望をもたらした。
   血管脳関門が障壁となるため、
    脳への細胞移植にはドリルで頭蓋骨に穴を開ける必要がある
                   とこれまでは考えられてきた。


  しかし、
 脳に入り込んで神経系細胞になる胎児細胞が
  持っている特有の分子を突き止めれば、
 臍帯血(さいたいけつ、へその緒に含まれる血液)などの中に
               同様の細胞を探し出せるかもしれない。
     胎児以外の供給源が見つかれば、可能性は大きく広がる。


こうした研究が進めば、
    静脈注射するだけで細胞を脳に送り込める
           非侵襲的な細胞移植が可能になるかもしれない。
  ただし、
   治療用の細胞は患者にできるだけ適合するものを選び、
                   拒否反応を避ける必要がある。
  また、
   注入された細胞が脳とは別の場所に定着してしまう恐れもあるが、
    「それが問題を引き起こすかどうかも、まだ分からない」
                          とドーはいう。


研究チームは現在、
  ヒトでもマウスと同様に退治細胞が脳に入り込むかどうか
                          を調べている。
  男児を産んだ経験のある女性について、
               死後に解剖して脳組織を調べる予定だ。
  男子に特有のY染色体が見つかれば、
             人でも同じことが起きている証拠になる。
  そうなると、
   「胎児細胞が母親の行動や心理に影響するのかどうか」
           という疑問も浮上してくるとシャオは指摘する。



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