妊娠が母体を守る?
前回の続き
胎児の細胞が母親の胎内に入り込むのは
母親の健康を守るためだという説もある。
胎児細胞が脳の損傷部位に集まったのはこの説を支持する材料だと、
タフツ大学のビアンキ(Diana W. Bianchi)はいう。
ビアンキは
胎児細胞が母親の胎内に何十年も存在し続けることを発見した研究者だ。
「母親が死んでしまうと赤ん坊は非常に困るわけで、
こうした仕組みが有益なものとして進化してきたとも考えられる」
と説明する。
一方ではこの説とは矛盾する事実もある。
非常にまれではあるが、
母親の組織に定着した胎児細胞が病気と関連している
とみられる例がいくつか報告されているのだ。
しかしビアンキは、
これらの胎児細胞は病気を引き起こしたのではなく、
母体が発したSOSに応じて集まったのだと考えている。
月刊誌「日経サイエンス」から