がん遺伝子の一つが細胞内の呼吸に影響を与えることが分かった。
通常の細胞では、
酸素を利用する細胞内呼吸から主なエネルギーを得る。
一方、がん細胞は、
急速に増殖することで酸素不足にさらされる危険が大きい。
そこで、細胞内呼吸ではなく、
酸素を使わない「解糖」という代謝経路から主なエネルギーを得ること
が知られている。
アメリカ、国立衛生研究所の的場博士らは、
がん細胞に最もよくみられる
変異遺伝子の一つであるp53が変異した細胞では、
代謝経路が細胞内呼吸から解糖に切りかわることをはじめてみつけた。
さらに、
p53遺伝子は変異していなくても、
細胞の酸素利用をつかさどるSCO2という遺伝子が変異した細胞でも、
同様に代謝経路が切りかわることが明らかになった。
博士らによると、
p53がSCO2を通じて、細胞内呼吸に影響を与えている
可能性が高いという。
この結果は、
p53が代謝にどう影響するかを知る新しい手がかりとなるだろう、
と博士らはのべている。
●Science 2006年6月16日号
月刊誌「NEWTONE」から