病気を吸い出す磁石の実験

病原体に結合する小さな磁気ビーズを使って血液を浄化


磁石で血液から病気を吸い出す。
そんな方法が開発された。
多臓器不全につながる致命的な感染症、肺血症の病原体を血液から抜き出す。


ハーバード大学医学部の生物学者イングバー(Donald E.Ingber)と博士研究員のユン(Chong wing Yung)らは、
ミクロンサイズの磁気ビーズを使って肺血症患者の血液から病原体を分離する方法を考案した。
敗血症を引き起こす細菌や真菌に結合する抗体をビーズにコーティングし、
このビーズを詰めたチューブに患者から引き出した血液を流す。
抗体が病原体と結合したら磁場をかけ、血液チューブのそばを流れる食塩水にビーズごと引き出して洗い流す。
病原体をこし取った血液は再び患者に戻す。10〜20ミリリットルの血液使った実験で、
病原体の80%を除去できた。


米国立小児保健発育研究所、新生児学者ラジュ(Tonse Raju)が、この発想に敬意を表すとともに問題点もあるという。
体内の病原体を減らすことが薬の効果を高めるという証拠はまだない。
さらに、肺血症によるダメージの多くは患者本人の身体が引き起こした炎症反応によるものであり、病原体が原因ではない。
また細菌や真菌のなかには、膿がたまった場所や血液供給の少ない腹腔などに潜んでいるものもあるので、
これらは血液洗浄では除去できない可能性があるとラジュは指摘する


それでもイングバーはくじけない。
未熟児をほぼ同じ大きさのウサギを使って予備試験を始めた。
この先いくつもの課題が待ち構えていることは認めるが、
磁石による病気の吸い出しがSFには終わらないと期待している。



月刊誌「日経サイエンス」2009.9月号から



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