睡眠不足がおこす記憶障害

短時間の断眠によって記憶や学習に障害が生じるしくみが明らかにされた。
近年多くの人が慢性的な睡眠不足を抱えている。
睡眠不足になると、学習や記憶に障害が生じることが知られている。
これは、脳内にある記憶をつかさどる「海馬」とよばれる部位に障害がおきるためと考えられている。
しかし、そのくわしいしくみはよくわかっていなかった。


アメリペンシルバニア大学のヴェチェイ博士らは、短期間の睡眠不足により学習・記憶の障害がおきるメカニズムを特定した。
博士らは、短期間断眠させたマウスの海馬を調べた。
その結果神経細胞の信号伝達を活性化させる「cAMP」という物質が減少していた。
また、cAMPを分解する酵素「PDE4」がふえることも確認された。
さらに、マウスにPDE4のはたらきを阻害する薬を投与したところ、
断眠により引きおこされた記憶・学習の障害が回復した。


この結果から、睡眠障害による記憶や学習の障害の治療には、cAMPを増強する薬が有効かもしれないと博士らは考えている。


「NEWTON」2010年2月号