おとりで感染拡大を防ぐ

遺伝子を組みかえたニワトリで鳥インフルエンザの感染拡大がおさえられた。
Science2011年1月14日号


ニワトリを高確率で死亡させる鳥インフルエンザウィルス(HPAI)が、世界の養鶏産業をおびやかしている。
現在のワクチンではウィルスを撲滅できない。そのため1羽でも感染がみつかると、養鶏場全体のニワトリを殺処分し、感染拡大を防ぐしかなかった。


イギリスケンブリッジ大学のライアル博士らは、体内でのHPAIの増殖を抑制するような遺伝子組みかえニワトリを生み出した。
このニワトリは、HPAIを増殖させる分子を引きつけてそのはたらきを阻止する“おとり”分子を体内でつくることができる。


このニワトリにHPAIを感染させたところ、自身は感染症で死んでしまったものの、他の健康なニワトリへの感染を抑える効果がみられた。
一緒の部屋に入れた健康なニワトリの死亡数が、通常のニワトリでは10羽中7羽上がったのに対し、2羽にとどまったのだ。
博士らは、多様な型のHPAIに効果を発揮することを、今回のニワトリの利点としてあげている。
「NEWTON」2011年5月号