遺伝子を失い進化?

ヒトが進化する過程で遺伝子を失うことの重要性が明らかになった
nature2011年3月10日号


ヒトは霊長類の中でも独自の特徴をもつ。退化した体毛や大きな脳容積、すぐれた言語能力などである。
これらを得るに至った進化過程は、DNAのうち、タンパク質の情報を含む領域(遺伝子)を多様な動物種と比較して研究されてきた。


アメリスタンフォード大学のマクリーン博士らは、従来とは逆に、DNAの98%を占める。
タンパク質の情報を含まない領域に着目した。この領域をほかの霊長類と比較した結果、
ヒトのみが、完全に失った遺伝子を510ヶ所発見した。
これらの遺伝子をマウスで実験的にはたらかせたところ、二つの遺伝子の機能がわかった。
一つは、ほおの感覚ヒゲと雄の生殖器のトゲをつくり、もう一つは脳容積の増加をおさえるという。
ヒトの外見や能力は、新たな遺伝子を得たからではなく、遺伝子を失ったために生まれた可能性もある。
それはひきつづき遺伝子の機能を解析することでわかるだろうと、博士らはのべている。


「NEWTON」2011年7月号